「転職軸」という用語を耳にする機会はあっても、あまり詳しく知らない方が多いかもしれません。
転職軸とは、自分が転職先で何を求め、どのような働き方やキャリアを築きたいかを明確にしたものです。転職軸をはっきりさせると、企業選びや面接でのアピールがしやすくなります。
そこでこの記事では、転職軸の重要性や作り方、面接での回答例を紹介し、軸が定まらない時の対策まで解説します。転職の成功率を高めたいなら、まずは転職軸から考えてみましょう。
転職軸はなぜ重要なのか
転職活動において、「転職軸」を持つことは非常に重要です。転職軸とは、自分が転職先で求める条件や重視する価値観、目指すキャリアの方向性を指します。
転職活動の中で、なぜその企業を選んだのか、また自分が何を求めているのかが明確になるため、採用担当者にとっても応募者の適性を判断する材料となります。また、面接だけでなく、企業の選定などの転職活動全体にも影響を及ぼすものです。ここからは、転職軸が重要な理由を解説します。
転職活動において面接で尋ねられる傾向にあるから
転職活動の際に、面接で「転職軸」について質問されるケースは少なくありません。
採用担当者は応募者の価値観や転職先を選ぶ基準を知って、入社後に活躍できそうか、長く貢献できそうかを判断したいためです。
具体的には「なぜこの会社を選んだのですか」「あなたの転職軸は何ですか」「転職で重視していることは何ですか」などと問われる場合があります。
しかし、この質問に明確に答えるためには準備が必要です。そのため、自分が重視する価値観やキャリアの目標を整理して、面接で説得力のある回答ができるようにしましょう。
転職軸をもつことで転職もスムーズに進められるから
転職軸を持つと、面接のみならず転職活動自体がスムーズに進められます。
転職軸がはっきりすれば、応募する企業を選定しやすくなり、不要な応募を避けられます。また、転職先の条件や企業文化が自分に合っているかどうかを判断しやすくなり、企業とのミスマッチも防げるでしょう。
ほかにも、志望動機を伝える際に説得力が増す、自己理解が深まるといったメリットもあります。結果として、転職活動を進めやすく、入社できた後の満足度も高まるでしょう。
面接における転職軸の回答例
転職軸の分け方はさまざまで決まった定義はありませんが、大別すると「仕事」「待遇」「人」「会社」の軸があります。
転職軸は面接で質問されやすい項目であるため、大体どんな風に答えたら良いのか知っておくと、自信をもって面接に臨めるでしょう。
ここからは、転職軸を4つに分けて、面接での回答例を紹介します。転職で叶えたいことを上手く伝えられるよう準備しましょう。
待遇に関する回答例
待遇を転職軸にすると、面接での答え方に困る場合があるかもしれません。特に給与のように金銭面の場合、率直に言うのが憚られる方も多いでしょう。そのため、具体的な理由をつける、ポジティブに言い換えをするのがおすすめです。
一例として「年収を上げたい」場合であれば、「評価制度」に絡めると回答しやすくなります。例えば、以下のような回答の仕方もあるでしょう。
「前職では、一定の成果を上げた際の評価制度が曖昧であり、努力が給与に反映されにくい環境でした。今回の転職では、明確な評価基準と連動する報酬制度が整っている企業で働き、自分の実績に見合った評価を受けながら、さらなる成長を目指したいと考えています。」
このように、自分が求める待遇がキャリアの成長にどうつながるかを説明すれば、単なる金銭的な要求に見えず、前向きな印象を与えます。
働き方に関する回答例
働き方を重視する転職軸の場合は、具体的なワークライフバランスの希望や、重視する理由、自分の生産性を高めるための環境についても伝えると良いでしょう。
以下のような回答も一例として挙げられます。
「これまでの職場では、労働時間が長かったため、業務効率の低下が課題でした。今回の転職では、フレックスタイム制度やリモートワークの導入が進んでいる企業で、自分のパフォーマンスを最大限に発揮し、より効率的に成果を上げたいと考えています。」
このように、求める働き方が生産性向上や成果にどうつながるのかを示せれば、採用担当者に好印象を与えられるでしょう。
仕事やキャリアに関する回答例
仕事やキャリアを転職軸とする場合、自分のスキルアップやキャリアアップ、キャリアチェンジの方向性を具体的に伝えると良いでしょう。求める仕事内容や目指すキャリアパスを明確にすることで、納得感を与えられます。
例えば、以下のような回答の仕方もあるでしょう。
「前職では〇〇分野のスキルを磨くことができましたが、さらに専門性を高めるため、新しい技術に触れられる環境が必要だと感じました。御社では〇〇分野において先進的なプロジェクトに取り組んでいることを知り、自分のキャリア目標と一致していると考え、応募いたしました。」
このように、自分のキャリア目標が企業の方針と一致していることを伝えると、採用担当者に「長く働いてくれそうな人材」として見られやすくなります。
会社組織に関する回答例
会社組織や企業文化を重視する転職軸の場合は、自分がどのような環境でモチベーションを高められるかを具体的に説明しましょう。企業理念への共感や社会貢献性、経営陣との近さ、女性管理職の比率など、自分の中で重視する項目があるはずです。
以下のような回答も一例として挙げられます。
「前職では、トップダウンの決定が多く、自分の意見を反映する機会が少ない環境でした。今回の転職では、従業員の意見を尊重し、チームでの意見交換が活発な企業を選びたいと考えています。御社の〇〇という企業文化に共感し、自分の考えを積極的に発信しながら、チームとともに成果を上げられると思い、応募いたしました。」
このように、組織文化が自身の成長や貢献にどうつながるかを示せれば、採用担当者に具体的なイメージを持たせられるでしょう。
転職軸の作り方
転職活動を効果的に進めるためには転職軸が欠かせません。しかし、転職にあたって漠然と優先したい事項があっても、明確な転職軸まではない方も多いでしょう。
そこで、ここからは転職軸の作り方を解説します。順を追って自分に当てはめ、転職軸を作っていきましょう。
1.転職したい理由を明確にする
まずは、なぜ転職を決意したのか、転職したい理由を明確にしましょう。現職への不満や課題を整理すると把握しやすくなります。
例えば、キャリアアップを目指したい、専門性を活かしたい、給与をアップさせたい、新しい業界で挑戦したいなど、人によってさまざまあるでしょう。
このような具体的な目的を持つと、転職軸の基盤が浮かび上がってきます。
2.キャリアの棚卸しをする
次に、これまでのキャリアを振り返る、いわゆるキャリアの棚卸しをします。
過去の業務経験や達成した成果、獲得したスキルを具体的に整理しましょう。例えば、これまでに関わったプロジェクトで得た経験や、自分の得意とする分野をリストアップしていきます。
キャリアの棚卸しによって、どんな業務に携わってきたか、どんなスキルを磨いてきたかを言語化しましょう。
3.転職市場をリサーチする
自分の経歴やスキルを言語化できたら、次は転職市場のリサーチです。
自分のスキルを踏まえて市場価値を分析すると、人材の需要と共有のバランスを把握しやすくなります。
例えば、求められるスキルを有する人材が不足していれば市場価値は高くなるものです。また、どのような職種が成長しているかも把握できます。
自分のスキルが思いもよらないところで求められている可能性もあるため、市場を分析して自分の価値を把握しましょう。
4.優先順位をつける
最後に、転職で重視する条件をピックアップし、優先順位をつけましょう。この時、具体性が重要です。単に「〇〇を一番重視する」と決めるのではなく、可能なら数値で条件を決めておきましょう。ちなみに、条件はmustかwantに分けておくと、優先順位をつけやすくなります。
例えば、「給与アップ」「ワークライフバランス」「キャリアアップ」「企業文化」といった条件の中で、重視する順を決め、どの程度の条件を求めるのか基準となる数値を決めるといった具合です。
優先順位をつけたら転職軸の完成です。これまで曖昧だった考えが具体的な行動指針に変わり、転職活動をよりスムーズに運べるでしょう。
転職軸が定まらない時にできること
転職軸がなかなか定まらず、転職活動の進捗もいまいちだと感じることがあるかもしれません。
前述した転職軸の作り方を試みてもしっくりこないと感じたら、自己分析か第三者への相談をおすすめします。一度別の観点から考えてみて、自分の価値観やキャリアの方向性をしっかり見つめ直してみましょう。
自己分析をする
転職軸が定まらないなら、まずは自己分析をおすすめします。
キャリアの棚卸しは転職軸を作るプロセスでしていますが、自己分析によってキャリアだけでなく「自分が何を重視するか」「何に幸せを感じるか」を再認識できるでしょう。
自分にとって大切なものが分かると、企業選びや優先順位づけの際に役立つはずです。
自己分析は5W1Hで深掘りする方法、モチベーショングラフを使う方法、SWOT分析を使う方法などがあります。それぞれ特徴があるため、自分に合った方法で試してみましょう。
転職活動における自己分析については、こちらの記事で解説しています。
キャリアの相談をする
一人で考えても転職軸がなかなか定まらないなら、第三者にキャリアの相談をするのも良いでしょう。
キャリアアドバイザーに相談すると、仕事に関するさまざまな悩みを相談できます。客観的な視点から転職軸を見つめ直すヒントを得られるかもしれません。
まとめ|転職軸をしっかり決めて面接に臨もう
転職軸は、転職活動を成功させるうえでの鍵となります。
自分の価値観やキャリアの目標を再確認し、それに基づいた転職軸をもてば、ミスマッチを防いで、より自分に合った企業を選べるでしょう。また、転職軸を明確にすれば、面接でも説得力を持ってアピールでき、転職活動を有利に進められるはずです。もし転職軸が定まらない場合は、自己分析やキャリアの相談をすると、良いかもしれません。
自分の成長のために、転職軸をしっかり固めて、自信を持って転職活動に臨みましょう。